介護保険の概要~設立の経緯と主たる目的~

介護保険について多くの方に知って頂くために、弊社のホームページでは「介護保険とは?」について複数回にわたり記事を記載しています。

今回の内容

①日本の超高齢社会・その他の社会状況について
②介護保険制度設立の経緯
③介護保険の概要

①日本の超高齢社会・その他の社会状況について

日本は現在、高齢化率(人口に対しての高齢者の割合)が高い超高齢社会です。
また今後も高齢化率は高くなっていきます。
具体的な数値として2025年に「65歳以上の高齢者は3677万人(全人口の30%)」で「75歳以上の高齢者は2180万人(全人口の17.8%)」と言われています。

引用元:厚生労働省 今後の高齢者人口の見通しについて
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link1-1.pdf

このことにより、介護のサービスを必要とする高齢者の数は年々増えていく事と介護期間が長くなっていく事が予測されています。

また日本は戦後に核家族化が進み、続いて単独世帯が増加してきました。

その影響があって現在では夫婦ともに高齢者である世帯や、高齢者単独世帯の数も増えてきています。 高齢の方が配偶者の介護を行う老老介護の問題もあり、家族の介護力の低下している現状があります。

②介護保険制度設立の経緯

以前には「老人福祉制度」と「老人医療制度」がありました。
老人福祉制度は主に特別養護老人ホーム、ホームヘルプサービス、デイサービスなどです。
老人医療制度は主に老人保健施設、訪問看護、デイケアなどです。
2つの制度にはそれぞれ問題点があり、今後の高齢社会を支えるのには限界があると考えられました。

これに対して2000年より「介護保険制度」の施行となりました。
介護保険制度では老人福祉制度と老人医療制度を再編し、社会保険方式を導入しています。

このことによって老人福祉制度・老人医療制度だったサービスを同様の手続きや利用者負担で、利用者の選択に基づいて総合的に利用できる利用者本位の制度となりました。

③介護保険の概要
介護保険の目的(介護保険法第1条より)

「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。」

【要約すると重要な点は下記の内容です】
利用者の尊厳を保持する事を重点においています。
②出来うる限り自立した生活を営めるように、サービスによって自立支援します。
③国民の共同連帯の理念に基づいた「社会保険方式」を導入しています。

介護保険の基本的理念(介護保険法第2条を参考)

さきほどの目的をより具体的に記載しているのが基本的理念です。

要介護状態・要支援状態の軽減・悪化防止
出来る限り要介護状態・要支援状態の軽減・悪化の防止を行います。また、市町村が行う地域支援事業や老人保健事業と連携し、リハビリテーションの充実を図ります。

②医療との連携への十分な配慮
介護保険で行うサービスも医療と密接な関係があり、利用者は介護サービス・医療サービスの両方を使用する方が多いので、連携に対しては十分な配慮を行います。

③利用者の選択に基づく適切なサービスの総合的、効率的な提供
介護保険のサービスは利用者自身がサービス提供事業者を自由に選択し、直接利用契約を結ぶ仕組みという利用者本位の制度です。
そのためには利用者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、利用者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければなりません。

④多様な事業者又は施設によるサービス提供
利用者の要望や状態に応えるためには多様な事業所によるサービス提供が必要です。それぞれの事業所が特性を活かすことは大切です。

⑤在宅における自立した日常生活の重視
利用者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その在宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮する必要があります。

国民の努力及び責務(介護保険法第4条より)

介護保険法には国民に対して求める努力と責務が記載されています。

「1.国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。
2.国民は、共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担するものとする。」

【要約すると重要な点は下記の内容です】
要介護状態となることを予防するために健康の保持増進に努めましょう。
②要介護状態になった場合は適切なサービスを利用して有する能力の維持向上に努めましょう。
③共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担しましょう。

今回のまとめ

今回は『介護保険制度の概要』について説明しました。

重要な点としては「利用者の尊厳を保持すること」「出来うる限り自立を支援すること」と「社会保険方式」という事です。

サービスを提供する側、サービスを受ける側、保険料を納付する側など様々な方々が支えあい、出来うる限り自立したより良い生活を送れるように介護保険制度は大切な制度だと思います。

参考文献

『介護保険法、e-Gov法令検索(下記URL)』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000123
『介護保険制度の概要、厚生労働省老健局、2021年(下記URL)』
https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf
『日本の介護保険制度について、厚生労働省老健局、2016(下記URL)』
https://www.mhlw.go.jp/english/policy/care-welfare/care-welfare-elderly/dl/ltcisj_j.pdf
『ケアマネジャー試験対策研究会 著、福祉教科書 ケアマネジャー完全合格テキスト 2017年版、翔泳社、2016年』
『今後の高齢者人口の見通しについて、厚生労働省(下記URL)』
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link1-1.pdf

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