公的医療保険の給付の種類~病気や怪我の療養に対して~

医療保険について多くの方に知って頂くために、弊社のホームページでは「医療保険とは?」について複数回にわたり記事を記載します。

今回の内容

①療養の給付・訪問看護療養費
②入院に関連する給付
③高額療養費制度

①療養の給付・訪問看護療養費
療養の給付

病気や怪我をした事によって通院や入院をすると医療費がかかります。
全額が自費だった場合には多額の費用となってしまいますので、その自己負担を軽減するための公的医療保険の給付が『療養の給付』です。

【療養の給付の項目】
・診察
・薬剤または治療材料の支給
・処置・手術その他の治療
・在宅で療養する上での管理、その療養のための世話、その他の看護
・病院・診療所への入院、その療養のための世話、その他の看護

【療養の給付の自己負担割合】
『出生~小学校入学前』  2割
『小学校入学後~64歳』 3割
『64歳~74歳』     2割(現役並みの所得者:3割)
『後期高齢者医療制度該当者』 1割。(一定所得以上で現役並み未満の所得者:*2割、現役並みの所得者:3割)*令和4年10月以降

引用元:我が国の医療保険について、厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html

自己負担割合については、別の記事でも説明しました。
『医療保険の概要~公的医療保険制度を中心に~』
https://www.occasione.co.jp/2022-8-9/

訪問看護療養費

ご自宅で療養されている方に対して、主治医の指示によって訪問看護ステーションから訪問した看護師による療養上の世話や必要な診療の補助を受けた場合は『訪問看護療養費』が給付されます。

訪問看護療養費の自己負担割合については上記の『療養の給付』と同様の割合です。

ちなみにですが、訪問看護は医療保険の場合だけではなく、介護保険での場合もあります。
弊社のホームページでは『介護保険とは?』についての記事もございますので気になる方はご覧ください。
『介護保険とは?』
https://www.occasione.co.jp/category/kaigohoken/

②入院に関連する給付
入院時食事療養費

入院中に食事療養を受けた場合には、食事療養にかかった費用について、『入院時食事療養費』が給付されます。給付は1食ごとに行われます。

【入院時食事療養費の計算】

引用元:入院時食事療養費、全国健康保険協会 協会けんぽ
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3170/sbb31702/1951-254/

上記の計算の中に書かれている『標準負担額』というのは、自己負担分の金額です。
その標準負担額は所得によって違います。

引用元:入院時食事療養費、全国健康保険協会 協会けんぽ
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3170/sbb31702/1951-254/

例えの計算です。
560円(食事療養費)-460円(標準負担額)=100円(入院時食事療養費)

入院時生活療養費

介護保険との均衡を保つために、医療療養病床に入院している65歳以上の高齢者に対して、生活療養(食事療養並びに温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養)を受けた場合に、『入院時生活療養』が給付されます。

【入院時生活療養費の計算】

引用元:入院時生活療養費、全国健康保険協会 協会けんぽ
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3170/sbb31703/1952-255/

上記の計算の中に書かれている『標準負担額』というのは、自己負担分の金額です。
その標準負担額は所得によって違います。

引用元:入院時生活療養費、全国健康保険協会 協会けんぽ
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3170/sbb31703/1952-255/
③高額療養費制度

重度な病気や怪我に対して入院や治療によって、『療養の給付』を受けたとしても自己負担額が高額になる事はあります。

1ヶ月間の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた金額の分を払い戻してもらう事が出来る制度が『高額療養費制度』です。
ただし、先進医療や差額ベッド代、上記で説明した入院時食事療養費と入院時生活療養費は高額療養費制度の対象となりません。

自己負担限度額は所得や年齢によって異なります。
また、同一世帯で1年間で3ヶ月以上の高額療養費制度を受けている場合は、4ヶ月目から自己負担額が変わります。

【70歳未満の所得区分】

引用元:高額療養費、健康保険組合連合会 けんぽれん
https://www.kenporen.com/health-insurance/kougaku-ryoyo/

【70歳以上の所得区分】

引用元:高額療養費、健康保険組合連合会 けんぽれん
https://www.kenporen.com/health-insurance/kougaku-ryoyo/

【後からの払い戻しではなく、窓口で自己負担限度額のみ支払う方法もある】
上記で説明した通り、高額療養費制度は1ヶ月でかかった医療費が高額な場合に支払った自己負担額に対して後から払い戻しがある制度です。(償還払い)
ただ、払い戻しがあるまでの家計の負担がありますし、事前に自己負担額を超えるのがわかっている場合もあります。
なので、事前に手続きをしていると窓口で自己負担限度額のみを支払うだけという方法もあります。
そのためには、事前に全国健康保険協会の各都道府県支部に「健康保険限度額適用認定申請書」を提出し、「健康保険限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関の窓口に認定証と被保険者証を提出してください。

【1人では自己負担限度額は超えないが、世帯の合算では超える場合】
1人では自己負担限度額が超えない場合はあります。
ただ同じ1ヶ月に同一世帯で、一人当たり21,000 円以上の自己負担が複数人あるときは、これらを合算して自己負担限度額を超えた金額が支給されます。(70歳以上は自己負担額すべて合算可能)

【1つの医療機関では自己負担限度額を超えないが、複数の合算では超える場合】
1つの医療機関への支払いだけでは自己負担限度額を超えない場合はあります。
ただ同じ1ヶ月で、同じ者が2つ以上の医療機関にかかり、それぞれの自己負担額が21,000 円以上ある場合も、合算して自己負担限度額を超えた金額が支給されます。(70歳以上は自己負担額すべて合算可能)

今回のまとめ

今回は『公的医療保険の給付の種類~病気や怪我の療養に対して~』について説明しました。

重要な点としては…
「療養の給付は診察・薬の処方・手術・入院に対して給付される」
「療養の給付の自己負担割合は基本的に3割負担だが、年齢や所得によっては1割・2割負担の場合がある。訪問看護療養費も同じ割合」
入院中は入院時食事療養費・入院時生活療養費が給付される場合がある
「自己負担が高額になってしまった場合には、高額療養費制度を活用すると、自己負担限度額を超えた分の払い戻しを受ける事が出来る」
という事です

国民皆保険制度なので、生まれた時から公的医療保険があるのは当たり前と思ってらっしゃる方は多いでしょう。
今回の記事が皆様にとって、改めて公的医療保険について学ぶ機会になれば幸いです。

参考文献

『我が国の医療保険について、厚生労働省(下記URL)』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
『療養の給付、全国健康保険協会 協会けんぽ(下記URL)』
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3170/sbb31701/1941-253/
『入院時食事療養費、全国健康保険協会 協会けんぽ(下記URL)』
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3170/sbb31702/1951-254/
『入院時生活療養費、全国健康保険協会 協会けんぽ(下記URL)』
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3170/sbb31703/1952-255/
『高額療養費、健康保険組合連合会 けんぽれん(下記URL)』
https://www.kenporen.com/health-insurance/kougaku-ryoyo/
『高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費・高額介護合算療養費、全国健康保険協会 協会けんぽ(下記URL)』
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3170/sbb31709/1945-268/
『高額療養費の合算対象について、全国健康保険協会 協会けんぽ(下記URL)』
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/wakayama/cat080/gassan/
『山田芳子 編著・米澤裕美 著、図解でわかる社会保険 一番最初に読む本 改訂4版、株式会社アニモ出版、2018年』

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