介護に関連する問題~高齢者虐待について~

日本では様々な『介護に関連する問題』が生じています。
現在は介護を行う・受ける必要がない方でも、将来的に介護を行う・受ける機会が起こりうるので、皆様にとって身近な問題です。
介護に関連する問題について多くの方に知って頂くために、弊社のホームページでは『介護に関連する問題』について複数回にわたり記事を投稿しています。

今回の内容

①高齢者虐待とは
②高齢者虐待の要因

③高齢者虐待の予防・発見後の対応

①高齢者虐待とは

高齢者虐待は『65歳以上の高齢者に対する虐待』の事を言います。

高齢者虐待に対しては「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法とも呼ばれています)」が平成17年11月に国会で可決・成立され、平成18年4月から施行されています。

高齢者虐待防止法では、『養護者による高齢者虐待』『養介護施設従事者等による高齢者虐待』に分けられています。

【養護者による高齢者虐待】
高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等が該当します。
高齢者虐待の件数の推移は下記の図です。
令和2年度で、相談・通報件数は35,774件、虐待判断件数は17,281件でした。

引用元:厚生労働省、令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000196989_00008.html

【養介護施設従事者等による高齢者虐待】
老人福祉法及び介護保険法に規定する『養介護施設』または『養介護事業』の業務に従事する職員が該当します。
『養介護施設に該当する施設』
老人福祉施設、有料老人ホーム、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設、地域包括支援センター
『養介護事業に該当する事業』
老人居宅生活支援事業、居宅サービス事業、地域密着型サービス事業、居宅介護支援事業、介護予防サービス事業、地域密着型介護予防サービス事業、介護予防支援事業

高齢者虐待の件数の推移は下記の図です。
令和2年度で、相談・通報件数は2,097件、虐待判断件数は596件でした。

引用元:厚生労働省、令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000196989_00008.html
虐待の種類
虐待の種類内容・具体的な例
身体的虐待・暴力的行為で、痛みを与えたり、身体にあざや外傷を与える行為
・本人の利益にならない強制による行為によって痛みを与えたり、高齢者を乱暴に取り扱う行為。(例:無理やり食事を口に入れる。)
・外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為(例:身体拘束、閉じ込める)
介護・世話の放棄・放任・介護や生活の世話を行っている者が、その提供を放棄又は放任し、高齢者自身の身体・精神的状態を悪化させていること。(例:入浴させない)
・専門的な治療やケアが必要なのに、医療保険・介護保険等のサービスを受けさせない。
・同居人による虐待を放置する。
心理的虐待脅しや侮辱などの言語や威圧的な態度、無視、嫌がらせ等によって、精神的苦痛を与えること。
性的虐待高齢者にわいせつな行為をすること
(具体的な例)
・排泄の失敗に対して懲罰的に下半身を裸にして放置する。
・排泄や着替えの介助がしやすいという目的で、下半身を裸にしたり、下着のままで放置する。
・キス、性器への接触、セックスを強要する。
経済的虐待・本人の合意なしに財産や金銭を使用する。
・本人の希望する金銭の使用を理由なく制限する。
②高齢者虐待の要因

高齢者虐待の要因は一つではなく、下記の内容等が複雑に絡まって起きていると言われています。

【虐待者や高齢者の性格や人格】
・虐待をしている人の性格や人格
・高齢者本人の性格や人格
【介護負担】
・虐待者の介護疲れ
・高齢者本人の認知症による言動の混乱
・高齢者本人の身体的自立度の低さ
・高齢者本人の排泄介助の困難さ
【人間関係】
・高齢者本人と虐待をしている人のこれまでの人間関係
・配偶者や家族・親族の無関心
【経済的要因】
・経済的困窮

≪虐待に対して自覚がない場合がある≫
注意すべき点としては、虐待をしている側・受けている側で『虐待に対して自覚がない場合がある』という事です。特に虐待をしている側が自覚がないケースは多くあります。

引用元:厚生労働省 高齢者虐待防止の基本
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/boushi/060424/dl/02.pdf
③高齢者虐待の予防・発見後の対応

【高齢者虐待の予防】

①虐待に対する知識の普及
虐待を防ぐためには、そもそも「何が虐待となるのか?」という事を知っておく必要があります。
上記でも説明したように虐待に対して自覚がない方もおられます。
また認知症や病状、高齢者に関する事に対する知識を学ぶ必要があります。

②養護者(養介護施設従事者等)に対する支援
高齢者虐待は上記で説明した通り様々な要因で起きます。
介護疲れ、人間関係上の不調和に対しても予防として周囲がアプローチしていく事は大切です。
場合によっては関係機関により、養護者の負担や悩みを軽減できるような対応が必要となります。

【高齢者虐待の発見後の対応】
市町村(区)または地域包括支援センターの高齢者虐待対応窓口へ「相談・通報」を早期にしましょう。
早期発見・早期対応は大切です。
この際には、虐待に対する自覚の有無は関係はなく、高齢者に被害がおよんでいるかどうかで判断が大切です。通報者に対してのプライバシーは保護されます。
担当者が単独で判断する訳ではなく、複数の職員と協議し、関係機関と連携しながら対応の仕方を判断・実行します。

今回のまとめ

今回は『介護に関連する問題~高齢者虐待について~』を説明しました。

重要な点としては…
高齢者虐待は『65歳以上の高齢者に対する虐待』の事を言う
「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)がある」
「虐待の種類として、身体的虐待、介護・世話の放棄・放任、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待がある
「虐待の要因は、虐待者の性格、虐待者と高齢者の人間関係、介護負担など様々な要因が複雑に絡まっている」
「虐待の予防として、①虐待に対する知識の普及②養護者(養介護施設従事者等)に対する支援」
「高齢者虐待の発見後は、市町村(区)または地域包括支援センターの高齢者虐待対応窓口へ「相談・通報」を早期にする」
という事です。

日本の中では超高齢社会によって、様々な『介護に関連する問題』があります。
世界においても高齢化が進んでいる事から、『介護に関連する問題』へのアプローチは日本だけではなく、世界に対しても良い影響を与えるのではないかと考えられます。

参考文献

『令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果、厚生労働省、2020年(下記URL)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000196989_00008.html
『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律、e-Gov法令検索(下記URL)』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC1000000124
『高齢者虐待防止の基本、厚生労働省(下記URL)』
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/boushi/060424/dl/02.pdf
『高齢者虐待への具体的な対応、東京都福祉保健局(下記URL)』
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/zaishien/gyakutai/understand/taiou/index.html

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